支払手形
支払手形とは通常の取引に基づいて発生した手形債務をいう。
通常の取引とは、当該会社の事業目的のための営業活動において、経常的に又は短期間に循環して発生する取引をいう。従って、通常の取引以外の取引に基づいて振出した約束手形、例えば固定資産の購入に伴い振出した約束手形は「設備関係支払手形」、借入の実行に伴い金融機関に差し入れた約束手形は「借入金」として処理する。
参考:会社計算規則第七十五条第2項第一号イ、会社計算規則第七十四条第3項第一号ロ
仕訳例
(1) 支払手形の振出
買掛金2,000,000円の支払いのため、約束手形を振出して支払った。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 2,000,000 | 支払手形 | 2,000,000 |
(2) 為替手形の引受
仕入れ先であるA社は、B社を受取人、当社が引受人とする為替手形500,000円を振出し、当社にその手形金額の支払を求めてきたので、当社はその支払を承諾した。当社はA社に対する買掛金があり、500,000円は買掛金の支払である。為替手形であっても、手形金額を支払う義務が発生するものは支払手形勘定で処理する。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 500,000 | 支払手形 | 500,000 |
(3) 支払手形の決済
支払手形2,000,000円の決済期日が到来し、当座預金から決済した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 2,000,000 | 預金/当座預金 | 2,000,000 |
(4) 為替手形の決済
当社が引受人である為替手形の期日が到来し、当座預金から決済した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 500,000 | 預金/当座預金 | 500,000 |
(5) 決済期日の短縮
当社が振り出した支払手形10,000,000円について、支払先の資金繰りの都合で現金での支払いに変更してもらいたいとの要請があり、利息125,000円を差引くことで合意したので、小切手9,875,000円を振出し既に振出した手形と交換した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 10,000,000 | 預金/当座預金 | 9,875,000 |
受取利息及び割引料 | 125,000 |
(6) 約束手形が支払期日に決済されなかった
支払手形10,000,000円の決済期日が到来したが、期日に預金から引き落としがなかった。調査の結果、手形所持人が取立を忘れたことが判明した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形(注) | 10,000,000 | 未払金 | 10,000,000 |
(注) 支払手形の所持人が金融機関に取立依頼を忘れると、その支払手形は手形交換のシステムでは決済されない。この場合、支払手形勘定から未払金勘定に一旦振替をしておき、その後手形所持人からの支払要請に基づいて支払手形と交換のうえ支払いを実施する。
(7) 決済期日の延長
当社が振り出した支払手形10,000,000円の決済期日が当月末に到来するが、当社資金繰りの都合で決済期日を1ヶ月延長し、利息42,000円を支払うことで手形所持人の了承を得たので、新たな約束手形10,000,000円と利息相当の小切手42,000円を振出し、既に振出した手形と交換した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 10,000,000 | 支払手形 | 10,000,000 |
支払利息及び割引料 | 42,000 | 預金/当座預金 | 42,000 |
(8) 支払手形の分割
支払手形10,000,000円を振出したが、支払先から5,000,000円の支払手形2枚に分割してほしい旨の要請があったのでこれ合意し、既に振出した支払手形と交換した。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 10,000,000 | 支払手形 | 10,000,000 |
(9) 期末日が休日の場合の支払手形の処理
手形や小切手は手形交換所での交換処理により、振出人の銀行口座から引き落とされる。支払期日が金融機関の休日にあたる場合、その決済は翌営業日に行われることから、手形の支払期日と実際に預金口座から引き落とされる日にずれが生じる。この場合の会計処理は、①支払期日に決済があったものとして処理する方法、②実際に預金口座から引き落とされた日をもって処理する方法がある。実務ではどの方法も認められている。ただし、その金額に重要性がある場合、採用した方法及びその金額を注記する必要がある。
イ 支払手形に記載された支払期日に基づき決済があったものとする処理
支払手形30,000,000円が期末日に支払期日を迎える。期末日は休日のため、銀行口座からの引き落としは翌営業日となる。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 30,000,000 | 預金/当座預金 | 30,000,000 |
ロ 実際に預金口座から引き落とされた日をもって処理する場合
期末日には仕訳をしない。