会計やさんのメモ帳 
 

繰延税金資産

繰延税金資産・繰延税金負債とは、税効果会計を適用した場合に認識される将来減算一時差異に、法定実行税率を乗じて得た金額をいう。

繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産又は投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債又は固定負債として表示しなければならない。ただし、特定の資産・負債に関連しない繰越欠損金等に係る繰延税金資産については、翌期に解消される見込みの一時差異等に係るものは流動資産として、それ以外の一時差異等に係るものは投資その他の資産として表示しなければならない。

流動資産に属する繰延税金資産と流動負債に属する繰延税金負債がある場合及び投資その他の資産に属する繰延税金資産と固定負債に属する繰延税金負債がある場合には、それぞれ相殺して表示するものとする。ただし、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、原則として相殺してはならない。

(参考:会社計算規則第83条、税効果に係る会計基準) 

 


仕訳例目次

前提条件

(1) 貸倒引当金

(2) 賞与引当金

(3) 棚卸資産の評価損

(4) 退職給付引当金

(5) 固定資産圧縮積立金

(6) 交際費

(7) 未払事業税


仕訳例

本設例は、企業会計基準適用指針第28号税効果に係る適用指針設例の一部を抜粋したものです。

前提条件

(1) A社の決算日は、3月31日である。

(2) A社では、X0年3月期以前に納税申告書における調整項目はないものと仮定する。

(3) A社のX1年3月期及びX2年3月期の課税所得の見積額は、次のとおりである。

 
 X1年3月期X2年3月期備考
税引前当期純利益9,67011,648 
加算:貸倒引当金繰入限度超過額1,000500一時差異
賞与引当金400300
棚卸資産評価損800
退職給付引当金2,0001,000
交際費損金不算入額200100 
加算計4,4001,900 
減算:賞与引当金認容400一時差異
棚卸資産評価損認容800
固定資産圧縮積立金繰入額1,000
未払事業税認容444
減算計1,0001,644 
課税所得の見積額13,07011,904 

 

(4) A社は、X1年3月31日に未払事業税を444計上する。また、X2年3月31日に未払事業税を405計上する。

(5) A社は、回収可能性適用指針第17項に定める(分類1)に該当する企業であり、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。

(6) 法定実効税率は、X0年3月期及びX1年3月期については30%であった。

なお、X2年3月期において税法を改正するための法律が国会で成立し、X2年4月1日以後開始する事業年度の法定実効税率は25%となった。

2 会計処理

(1) 貸倒引当金

@ 貸倒引当金に関する前提条件

A社は、売掛金につき、貸倒見積高に基づき算定した貸倒引当金を控除している。

当該貸倒引当金の計上額のうち税務上の損金算入限度超過額(貸倒引当金繰入限度超過額)は、X1年3月期に1,000、X2年3月期に500生じている(貸倒引当金繰入限度超過額の累計額は、X1年3月期は1,000、X2年3月期は1,500である。)。

X3年3月期において当該貸倒引当金は、その全額について、税務上 の損金に算入される要件(法人税法第52条)を満たすものとする。

A 繰延税金資産の計上

A社のX1年3月期における貸倒引当金の計上額と課税所得計算上の資産(控除項目)の金額との間には1,000の差額(貸倒引当金繰入限度超過額)がある。

また、X2年3月期においては、1,500の差額がある。

当該貸倒引当金繰入限度超過額は、貸倒引当金が税務上の損金に算入される事業年度の課税所得を減額する効果を有するため、将来減算一時差異に該当する。

したがって、A社は、X1年3月期において、貸倒引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異1,000について繰延税金資産を計上する。

同様に、X2年3月期においては、貸倒引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異1,500について繰延税金資産を計上する。

B 会計処理

X1年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*1)300法人税等調整額300

(*1)繰延税金資産(期首)0=貸倒引当金に係る将来減算一時差異(期首)0×30%

繰延税金資産(期末)300=貸倒引当金に係る将来減算一時差異(期末)1,000×30%

繰延税金資産の増加額300=繰延税金資産(期末)300−繰延税金資産(期首)0

X2年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*2)75法人税等調整額(注2)75

(*2)繰延税金資産(期首)300=貸倒引当金に係る将来減算一時差異(期首)1,000×30%

繰延税金資産(期末)375=貸倒引当金に係る将来減算一時差異(期末)1,500×25%

繰延税金資産の増加額 75=繰延税金資産(期末)375−繰延税金資産(期首)300

(2) 賞与引当金

@ 賞与引当金に関する前提条件

A社は、X1年3月期に賞与引当金を400計上し、X2年3月期に同額の賞与の支給を予定している(X2年3月期に実際に同額支給された。)。

また、X2年3月期に賞与引当金を300計上し、X3年3月期に同額の賞与の支給を予定している(X3年3月期に実際に同額支給された。)。

賞与については、賞与を支給する事業年度に、その全額が税務上の損金に算入されるものとする。

A 繰延税金資産の計上及び取崩し

賞与引当金は、賞与を支給する事業年度の課税所得を減額する効果を有するため、将来減算一時差異に該当する。

したがって、A社は、X1年3月期に計上した賞与引当金400に係る将来減算一時差異について繰延税金資産を計上する。

また、X2年3月期においては、賞与の支給に伴い X1年3月期に計上した賞与引当金は税務上の損金に算入され、当該賞与引当金に係る将来減算一時差異400が解消される一方、新たに賞与引当金を計上することに伴い将来減算一時差異が300生じる。したがって、A社は、X1年3月期に計上した繰延税金資産を取り崩し、新たに計上した賞与引当金に係る将来減算一時差異300について繰延税金資産を計上する。

B 会計処理

X1年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*1)120法人税等調整額120

(*1)繰延税金資産(期首) 0=賞与引当金に係る将来減算一時差異(期首)0×30%

繰延税金資産(期末)120=賞与引当金に係る将来減算一時差異(期末)400×30%

繰延税金資産の増加額120=繰延税金資産(期末)120−繰延税金資産(期首)0

 

X2年3月期

 
借方貸方
法人税等調整額45繰延税金資産(*2)45

(*2)繰延税金資産(期首)120=賞与引当金に係る将来減算一時差異(期首)400×30%

繰延税金資産(期末)75=賞与引当金に係る将来減算一時差異(期末)300×25%

繰延税金資産の減少額△45=繰延税金資産(期末)75−繰延税金資産(期首)120

 

(3) 棚卸資産の評価損

@ 棚卸資産の評価損に関する前提条件

A社は、X1年3月期に、営業循環過程から外れた棚卸資産について、一定の基準により会計上800の評価損を計上し、X2年3月期に当該棚卸資産をすべて処分する。

棚卸資産の評価損については、当該棚卸資産を処分した事業年度に税務上の損金に算入されるものとする。

A 繰延税金資産の計上及び取崩し

A社は、X1年3月期において棚卸資産の評価損を計上したことにより、貸借対照表上の棚卸資産の金額が課税所得計算上の資産の金額を下回り、一時差異が生じることとなる。

当該評価損は、当該棚卸資産を処分する事業年度に課税所得を減額する効果を有するため、将来減算一時差異に該当する。

したがって、A社は、X1年3月期において、棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異800について繰延税金資産を計上する。

また、X2年3月期に当該棚卸資産をすべて処分することにより、当該評価損800がX2年3月期に税務上の損金に算入され、当該棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異が解消される。

したがって、A社は、X2年3月期において、X1年3月期に計上した将来減算一時差異800に関する繰延税金資産を取り崩す。

B 会計処理

X1年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*1)240法人税等調整額240

(*1) 繰延税金資産(期首) 0=棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異(期首) 0×30%

繰延税金資産(期末)240=棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異(期末)800×30%

繰延税金資産の増加額240=繰延税金資産(期末)240−繰延税金資産(期首)0

 

X2年3月期

 
借方貸方
法人税等調整額240繰延税金資産(*2)240

(*2) 繰延税金資産(期首)240=棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異(期首)800×30%

繰延税金資産(期末)0=棚卸資産の評価損に係る将来減算一時差異(期末)0×25%

繰延税金資産の減少額△240=繰延税金資産(期末)0−繰延税金資産(期首)240

 

(4) 退職給付引当金

@ 退職給付引当金に関する前提条件

A社は、退職一時金制度を有している。

A社は、当該制度に係る退職給付引当金をX1年3月期に2,000、X2年3月期に1,000計上しており、X2年3月期の期末における退職給付引当金の残高は3,000である。

A社では、X1年3月期及びX2年3月期に退職した従業員はいない。なお、退職給付引当金については、退職金の支給額が確定した事業年度に税務上の損金に算入されるものとする。

A 繰延税金資産の計上

退職給付引当金は、税務上、退職金の支給額が確定する事業年度に課税所得を減額する効果を有するため、将来減算一時差異に該当する。

したがって、A社は、X1年3月期において、退職給付引当金に係る将来減算一時差異2,000について繰延税金資産を計上する。

また、X2年3月期においては、退職給付引当金を追加で1,000計上することに伴い将来減算一時差異が合計で3,000生じている。したがって、A社は、退職給付引当金に係る将来減算一時差異3,000について繰延税金資産を計上する。

B 会計処理

X1年3月期の会計処理

 
借方貸方
繰延税金資産(*1)600法人税等調整額600

(*1) 繰延税金資産(期首)0=退職給付引当金に係る将来減算一時差異(期首)0×30%

繰延税金資産(期末)600=退職給付引当金に係る将来減算一時差異(期末)2,000×30%

繰延税金資産の増加額600=繰延税金資産(期末)600−繰延税金資産(期首)0

 

X2年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*2)150法人税等調整額150

(*2)繰延税金資産(期首)600=退職給付引当金に係る将来減算一時差異(期首)2,000×30%

繰延税金資産(期末)750=退職給付引当金に係る将来減算一時差異(期末)3,000×25%

繰延税金資産の増加額150=繰延税金資産(期末)750−繰延税金資産(期首)600

 

(5) 固定資産圧縮積立金

@ 固定資産圧縮積立金に関する前提条件

A社は、X1年3月期の期末に、税法上の圧縮記帳の要件を満たす土地を取得し、積立金方式により税法上の圧縮記帳を行った(税法上の圧縮記帳額は1,000)。

当該土地については、工場の敷地の用に供し、当面の間、売却の可能性はない。

なお、税法上の圧縮記帳を行った資産については、売却が行われる場合、売却年度に土地圧縮積立金を取り崩し、当該取崩額が税務上の益金に算入されるものとする。

A 繰延税金負債の計上

A社は、X1年3月期において、積立金方式により税法上の土地の圧縮記帳を行ったことにより、X1年3月期の期末の貸借対照表上の土地の計上額は、課税所得計算上の土地の金額を1,000上回ることとなる。

このように、積立金方式による税法上の圧縮記帳額(固定資産圧縮積立金繰入額)は、将来(例えば、土地の売却時)の課税所得を増額する効果を有するため、将来加算一時差異に該当する。

したがって、A社は、当該将来加算一時差異1,000について繰延税金負債を計上す。

B 会計処理

X1年3月期

 
借方貸方
法人税等調整額300繰延税金資産(*1)300
その他利益剰余金/繰越利益剰余金700その他利益剰余金/土地圧縮積立金(*2)700

(*1)税法上の土地圧縮記帳額(固定資産圧縮積立金繰入額)に係る繰延税金負債の計上

繰延税金負債300=税法上の土地圧縮記帳額に係る将来加算一時差異1,000×30%

(*2)剰余金の処分による土地圧縮積立金の計上

土地圧縮積立金700=税法上の土地圧縮記帳額1,000−繰延税金負債300

 
X2年3月期

 
借方貸方
繰延税金負債(*3)50法人税等調整額50
その他利益剰余金/繰越利益剰余金50その他利益剰余金/土地圧縮積立金(*4)50

(*3) 税法の改正に伴う税率の変更による繰延税金負債の修正繰延税金負債の減少額△50=税法上の土地圧縮記帳額に係る将来加算一時差異1,000×(25%−30%)

(*4)税率の変更による繰延税金負債の修正に伴う土地圧縮積立金の計上土地圧縮積立金50は、繰延税金負債の減少額△50と同額加算される。


(参 考)

仮に、 将来の事業年度において当該土地を売却した場合、売却時に 次の会計処理を行うこととなる(法定実効税率は25%とする。)。

 
借方貸方
繰延税金負債(*5)250法人税等調整額250
土地圧縮積立金(*6)750その他利益剰余金/繰越利益剰余金(*5)750

(*5)土地の売却に伴う繰延税金負債の取崩し。繰延税金負債の減少額△250は、売却直前までに計上された繰延税金負債の額(300−50)となる。

(*6)土地の売却に伴う土地圧縮積立金の取崩し。土地圧縮積立金の取崩額750は、売却直前までに計上された土地圧縮積立金の額(700+50)となる。

 

(6) 交際費

@ 交際費に関する前提条件

A社は、X1年3月期に交際費を200、X2年3月期に100計上した。

交際費は、税務上、その全額が永久に損金に算入されないものとする。

A 繰延税金資産の計上

交際費は、永久に税務上の損金に算入されないことから、将来の課税所得を減額する効果を有さないため、将来減算一時差異には該当せず、一時差異等に該当しない項目となる 。したがって、A社は、繰延税金資産を計上しない。

B 会計処理

X1年3月期

仕訳なし

X2年3月期

仕訳なし

(7) 未払事業税

@ 未払事業税に関する前提条件

A社は、未払事業税をX1年3月期に444、X2年3月期に405計上している(中間納付は行っていないものとする。)。

X2年3月期において、税務上、事業税の納付時にX1年3月期に計上した未払事業税が同額、損金に算入されるものとする。

A 繰延税金

資産の計上及び取崩し未払事業税は、事業税の納付時に課税所得を減額する効果を有するため、将来減算一時差異に該当する。

たがって、A社は、X1年3月期においては、未払事業税に係る将来減算一時差異444について繰延税金資産を計上する。

また、X2年3月期においては、事業税の納付に伴い当該未払事業税444が税務上の損金に算入され、当該未払事業税に係る将来減算一時差異が解消される一方、新たに未払事業税を405計上することに伴い将来減算一時差異が生じる。

したがって、A社は、X1年3月期に計上した繰延税金資産を取り崩し、新たに計上した未払事業税に係る将来減算一時差異405について繰延税金資産を計上する。

B 会計処理

X1年3月期

 
借方貸方
繰延税金資産(*1)133法人税等調整額133

(*1)繰延税金資産(期首)0=未払事業税に係る将来減算一時差異(期首)0×30%

繰延税金資産(期末)133=未払事業税に係る将来減算一時差異(期末)444×30%

繰延税金資産の増加額133=繰延税金資産(期末)133−繰延税金資産(期首)0

 
X2年3月期

 
借方貸方
法人税等調整額32繰延税金資産(*2)32

(*2) 繰延税金資産(期首)133=未払事業税に係る将来減算一時差異(期首)444×30%

繰延税金資産(期末)101=未払事業税に係る将来減算一時差異(期末)405×25%

繰延税金資産の減少額△32=繰延税金資産(期末)101−繰延税金資産(期首)133

 

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