会計やさんのメモ帳

企業結合会計基準及び事業分離等会計基準


企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書

平成十五年十月三十一日

 企業会計審議会

この基準に関して次の新しい基準が企業会計基準委員会から公表されています。企業会計基準第7号 事業分離等に関する会計基準、企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準、企業会計基準適用指針第10号 企業結合基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針。

目次

企業結合に係る会計基準の設定について

一 経緯

二 会計基準整備の必要性

三 会計基準の要点と基本的な考え方

1 会計基準の基本的考え方

2 取得と持分の結合の考え方

(1) 持分の継続

(2) 持分の継続と対価の種類

(3) 持分の継続と支配

(4) 共同支配企業の形成

3 取得の会計処理

(1) 取得企業の決定方法

(2) 取得原価の算定

(3) 取得原価の配分方法

(4) のれんの会計処理

(5) 負ののれんの会計処理

(6) 個別財務諸表上の会計処理

4 持分の結合の会計処理

(1) 資産、負債及び資本の引継ぎ

(2) 企業結合年度の連結財務諸表

(3) 会計処理方法の統一

(4) 企業結合前の取引等の消去

(5) 企業結合に要した支出額の会計処理

(6) 個別財務諸表上の会計処理

(7) 共同支配企業の形成

5 共通支配下の取引等の会計処理

(1) 共通支配下の取引

(2) 少数株主との取引

6 開示

四 実施時期等


企業結合に係る会計基準の設定について

一 経緯

1 証券取引法に基づくディスクロージャー制度については、連結経営の定着といった企業行動の変化や取引の複雑化・高度化といった近年の経済実態の変化に対応するために、既存の会計基準を改訂する必要性や新しい会計基準を設定する必要性があるとの認識が高まってきている。また、我が国企業の資金調達活動の国際化が進展し、海外からの投資がより一般化するにつれ、我が国の会計基準を国際的水準に調和させる必要性も広く認識されるようになってきている。

当審議会は、このような状況を考慮し、「連結財務諸表原則」の改訂をはじめとする会計基準の整備を精力的に進めてきており、平成十二年五月の総会において、新たに企業結合会計が審議事項に取り上げられ、第一部会において審議することが決定された。

2 企業結合会計に関する審議は、平成十二年九月から開始され、近年の商法改正、諸外国の会計処理基準の現状及び動向、我が国の会計実務、財務諸表利用者のニーズ等を考慮しつつ精力的に進められてきた。そこでの審議は、何よりも我が国の実態に適合し、かつ、その考え方が国際的に理解される企業結合会計の基準を設定する必要があるという基本認識に立つものであった。当審議会は、このような審議を踏まえ、企業結合に係る会計基準について検討すべき論点を取りまとめ、平成十三年七月に「企業結合に係る会計処理基準に関する論点整理」を公表した。その後、この論点整理に対して寄せられた意見を参考にし、また、国際的調和を重視する観点から、海外で行われていた企業結合会計の見直しに係る議論を適宜検討の対象に加えながらも、我が国の企業結合会計のあるべき姿についてさらに審議を進め、平成十五年八月に「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書(公開草案)」を公表し、広く各界の意見を求めた。

当審議会は、寄せられた意見を参考にしつつ更に審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、これを「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」として公表することとした。

二 会計基準整備の必要性

近年、我が国では、企業が外部環境の構造的な変化に対応するため企業結合を活発に行うようになってきており、企業組織再編成を支援するための法制の整備も進められている。しかし、会計基準の整備はやや立ち遅れており、現状では、「連結財務諸表原則」を除くと企業結合に適用すべき会計処理基準が明確ではなく、商法の規定の範囲内で幅広い会計処理が可能になっている。

一方、国際会計基準等の海外の基準では、企業結合全般に適用される会計基準が整備されており、企業結合の経済的実態に応じてパーチェス法(被結合企業から受入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法)と持分プーリング法(すべての結合当事企業の資産、負債及び資本を、それぞれの適切な帳簿価額で引継ぐ方法)のいずれかが使い分けられてきた。また、最近の海外の基準には、持分プーリング法を廃止する傾向が認められる。ただし、いずれの方法であっても、例えば、消滅会社から引継いだ資産を時価以下の範囲で任意に評価替えするような余地はなく、我が国の現行の会計実務とは大きく隔たっている。

企業結合による事業再編の重要性が高まっており、企業結合の経済的実態を正しく認識できる会計処理方法を確立するという観点や適切な投資情報のディスクロージャーという観点から、首尾一貫した会計基準の整備が必要である。

三 会計基準の要点と基本的な考え方

1 会計基準の基本的考え方

企業結合とは、ある企業(会社及び会社に準ずる事業体をいう。以下同じ。)又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが一つの報告単位に統合されることをいい、一般的には「連結財務諸表原則」にいう他の会社の支配の獲得も含む。本基準は、企業結合に該当する取引を対象とするため、共同支配企業とよばれる企業体を形成する取引及び共通支配下の取引等も本基準の適用対象となる。ただし、少数株主との取引等、「連結財務諸表原則」に会計処理に関する定めがあるものについては、本基準の対象取引から除くこととした。

本基準では、企業結合には「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実態を有するものが存在する以上、それぞれの実態に対応する適切な会計処理方法を適用する必要があるとの考え方に立っている。すなわち、「取得」に対しては、ある企業が他の企業の支配を獲得することとなるという経済的実態を重視し、パーチェス法により会計処理することとした。これは、企業結合の多くは、実質的にはいずれかの結合当事企業による新規の投資と同じであり、交付する現金及び株式等の投資額を取得価額として他の結合当事企業から受入れる純資産を評価することが現行の一般的な会計処理と整合するからである。他方、企業結合の中には、いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する支配を獲得したとは合理的に判断できないものがあり、このような「持分の結合」に対しては持分プーリング法により会計処理することとした。この考え方は、いずれの結合当事企業の持分も継続が断たれておらず、いずれの結合当事企業も支配を獲得していないと判断される限り、企業結合によって投資のリスクが変質しても、その変質によっては個々の投資のリターンは実現していないとみるものであり、現在、ある種の非貨幣財同士の交換を会計処理する際にも適用されている実現概念に通ずる基本的な考え方でもある。

また、本基準では、共同支配企業を、複数の独立した企業により共同で支配される企業であって、いずれの企業も単独ではその支配を獲得しないものと定義し、共同支配企業の形成を持分の結合として扱うこととした。共同支配企業は我が国においては合弁会社とよばれる場合もあり、その形成は、共同新設分割による新会社の設立、同一事業を専業とする子会社同士の合併など様々な形式がとられる。

なお、結合当事企業が結合後企業に拠出するという想定が根拠とされることも多いフレッシュ・スタート法(すべての結合当事企業の資産及び負債を企業結合時の時価に評価替えする方法)についても、諸外国の動向等を踏まえて慎重に検討したが、フレッシュ・スタート法の採用に合理性が認められるためには、新設合併のようにすべての結合当事企業がいったん解散し、すべての株主持分が清算された上で、新たに設立された企業へ拠出するという経済的実態が必要であると考えられる。また、諸外国における企業結合の会計処理をめぐる議論において選択肢の一つとして言及されてはいるものの、その方法を適用することが適切と考えられる事象やその根拠等が必ずしも明確ではない現況等を勘案し、企業結合の会計処理方法としてフレッシュ・スタート法を現時点においては採用しないこととした。しかしながら、フレッシュ・スタート法が諸外国において企業結合の会計処理方法として採用された際等には、フレッシュ・スタート法の要否を検討する必要性が生ずる可能性がある。

2 取得と持分の結合の考え方

(1) 持分の継続

従来から、企業結合には「取得」と「持分の結合」があり、それぞれ異なる経済的実態を有するといわれてきた。企業結合が取得と判断されれば、取得企業の資産及び負債はその帳簿価額で企業結合後もそのまま引継がれるのに対して、被取得企業の資産及び負債は時価に評価替えされる。他方、企業結合が持分の結合と判断されるのであれば、すべての結合当事企業の資産及び負債はその帳簿価額で企業結合後もそのまま引継がれる。このような相違が生ずるのは、持分の継続が断たれた側では、投資家はそこでいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行ったと考えられるのに対して、持分が継続している側では、これまでの投資がそのまま継続していると考えられるからに他ならない。取得の場合には、取得企業の持分は継続しているが、被取得企業の持分はその継続を断たれたとみなされている。他方、持分の結合の場合には、すべての結合当事企業の持分は継続しているとみなされている。このように、持分の継続・非継続により取得と持分の結合は識別され、それぞれに対して異なる会計処理が使い分けられてきた。

これを企業の損益計算の観点からいえば、次のようになる。持分の継続が断たれてしまえば、そこで投資家はいったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行い、それを取得企業に現物で出資したと考えられる。したがって、再投資額が結合後企業にとっての新たな投資原価となるが、それは企業結合時点での資産及び負債の時価に他ならない。そのような投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である。これに対して、持分が継続しているならば、そこでは投資の清算と再投資は行われていないのであるから、結合後企業にとっては企業結合前の帳簿価額がそのまま投資原価となる。この投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益である。このように、持分の継続・非継続は、企業にとっては投資原価の回収計算の違いを意味している。

取得と持分の結合は、このように異なる経済的実態を有していると考えられるので、それぞれを映し出すのに適した会計処理を使い分けることが必要となる。いずれかの結合当事企業において持分の継続が断たれていると判断されるならば、対応する資産及び負債を時価で引継ぐパーチェス法が、すべての結合当事企業において持分が継続していると判断されるならば、資産及び負債を帳簿価額で引継ぐ持分プーリング法が、企業にとっての投資原価の回収計算すなわち損益計算の観点から優れている。持分の結合と判断される企業結合が存在する限り、それに適した会計処理方法を定めておくことは必要であると考えた。

もちろん、持分の継続・非継続それ自体は、相対的な概念であり、具体的に明確な事実として観察することが困難な場合が多い。そこで、持分の継続を「対価の種類」と「支配」という操作可能な二つの観点から判断することとした。具体的には、①企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること、②結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が等しいこと、③議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと、という三つの要件をすべて充たせば持分は継続していると判断し、そのような企業結合に対しては持分プーリング法を適用することとした。もし、いずれか一つでも要件を充たさなければ、持分の継続は断たれたと判断し、パーチェス法を適用することとした。すなわち、持分の継続という概念を柱にして持分の結合を識別し、それ以外はすべて取得と判断することとした。これは取得企業を識別できない場合を持分の結合と判定する方法とは異なり、異なる経済的実態を有する取得と持分の結合のうち、持分の結合を積極的に識別し、それ以外の企業結合を取得と判定するアプローチである。

なお、①から③までの要件は、並列関係にあるのではなく、前者は後者の判定へ進むための必要条件である点には注意を要する。このような判定手順は、諸外国において持分プーリング法の濫用といわれてきたような、経済的実態が持分の結合ではない企業結合に持分プーリング法が任意で適用される事態を防止するためにも必要である。

なお、議決権比率判定にあたっては、潜在株式の議決権行使の可能性を考慮することが必要である。

(2) 持分の継続と対価の種類

企業結合に際して支払う対価の種類としては種々考えられるが、現金等の財産(負債の引受けを含む。)を対価とするものと、結合企業の株式を対価とするものとに大別できる。現金等の財産を対価として被結合企業の株式を取得した場合には、被結合企業の株主の持分が継続していないことは明白である。したがって、株式を対価とするもの以外は取得と考え、パーチェス法を適用することとした。

また、交付株式を償還する取決めがある場合など、形式的には株式を対価としていても、実質的に現金の代わりに株式を使用していることも考えられる。しかし、それは、経済的実態として現金等の財産を対価とした企業結合と同じと考えられるので、そのことを識別しなければならない。そこで、そのための識別規準を対価の種類の判定の中に設けた。

(3) 持分の継続と支配

持分の継続と支配の関係については、支配をより重視する最近の国際的な動向にも配慮し、企業結合に伴って支配・被支配の関係が生じたときは、支配される側の持分はそこで継続を断たれると考えることとした。

支配・被支配関係の判定は、「議決権比率が等しいこと」及び「議決権比率以外にも支配・被支配関係を示す一定の事実が存在しないこと」という二つの要件を充たしているか否かで行うが、この二つは並列的な関係にあるのではない。議決権比率が等しいという要件は、持分が継続しているためのいわば必要条件であり、この要件を充たして初めて、議決権比率以外の要件の判定を行うことになる。過半数の議決権を取得すれば、結合後企業の最高意思決定機関である株主総会を支配することができ、本基準において議決権比率以外の要件の判定規準として掲げられている事項を左右する権限を有しているのであるから、議決権比率を用いた支配の判定は、支配・被支配を判定するいわば最大の実質規準である。したがって、議決権比率が等しくなければ、その段階で取得として判定されることになる。

① 議決権比率による判定

まず、議決権比率が等しいという要件であるが、厳密に言えば、これは結合当事企業が2社であれば、結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総体として有することになった議決権比率が50対50 であることを意味する。したがって、議決権比率が50対50でなければ、理論上は支配・被支配の関係が成立することになるが、実務的な配慮から、上下概ね5パーセントポイントの幅をもたせることとした。議決権比率の小さい側が実質上の取得企業として法的にも存続する可能性はあり、50パーセント基準を機械的に適用するとそれを後述の逆取得として処理せざるを得なくなる。そうした実務上の不都合を減らすには、議決権の数値基準に多少の幅を持たせて議決権比率以外の要件の判断を加味する方が合理的とみられるからである。

結合当事企業が三社以上の場合、持分の継続についてはいくつかの考え方ができる。まず、1社が他の2社以上を支配する場合に、他の二社以上の持分の継続が断たれたと考えることも一つであろう。しかし、この考え方は、1社の株主が結合後企業に対して過半数の議決権比率を有している場合にのみ、支配・被支配関係が成立することを意味するが、他の2社以上を一つのまとまりとして捉えて持分の継続を判定することになり、ここでいう企業結合が独立した第三者間の取引であることを考慮するならば、そのような捉え方には難があるといわざるを得ない。さらに、結合当事企業が二社の場合の要件を実質的に緩和する裁量を残すことになる。すなわち、二社であれば取得と判定される企業結合であっても、一社を加えて三社の企業結合とすることで持分の継続と判定することを可能にすることができる。これらの理由から、本基準ではこの考え方は採らないこととした。

次に、各結合当事企業の株主の議決権比率を個別に検討して、その継続性を判定することも一つの考え方であろう。例えば、A、B、C社の株主の結合後企業に対する議決権比率が40対40対20であるとする。A、B、C社は独立企業であること、持分の継続は相対的な概念であることを考慮するならば、A社とB社、A社とC社、B社とC社という形でそれぞれの持分の継続性を判定することになる。この例では、A社とB社の株主の持分は継続しており、C社の株主の持分は継続を断たれたと判定される。したがって、A社とB社の企業結合は持分プーリング法で処理され、C社についてはパーチェス法で処理されることになる。

しかし、この考え方は、次のような別の問題を惹起する可能性がある。すなわち、企業結合の組み合わせをどう考えるかにより、会計処理の結果に差が生じてくることである。上記の会計処理は、まずA社とB社が企業結合し、その後AB社がC社を企業結合したという仮定が必要である。しかし、この仮定は、上記の企業結合から論理的に導かれるものではない。これ以外の仮定も可能である。例えば、まずB社とC社が企業結合し、次にBC社がA社を企業結合したと仮定すれば、B社とC社の企業結合は取得であり、BC社とA社の企業結合も取得と判定される。このように、各結合当事企業の株主の議決権比率を個別に検討して、その継続性を判定することになると、そこに裁量が働く余地が残ることになる。したがって、本基準では裁量の余地をできるだけ縮小するということを第一に考え、この考え方も採らないこととした。

本基準では、結合当事企業が三社以上の場合、議決権比率が等しいか否かの判定は、議決権比率が最上位の企業の議決権比率を基準とし、他の各企業との議決権比率を結合当事企業が二社の場合の比率にそれぞれ還元した上で判定することとした。そして、最上位の企業と議決権比率が等しいと判定された企業が1社でも存在すれば、議決権比率が等しいと判定されなかった結合当事企業も含め、当該企業結合は議決権比率でみる限りは持分が継続していると考えて、議決権比率以外の要件の判定に進むこととした。

もちろん、この考え方にも問題は残る。それは、議決権比率が等しいと判定されなかった企業の持分の継続性の判定が、議決権比率が等しいと判定された企業についての最終的な判定に結果として依存することである。確かに、このような問題は残るが、裁量の余地をできるだけ縮小することを第一に考えて、議決権比率が最上位の企業を基準とする判定方法を採ることとした

議決権比率が等しいと判定されれば、いずれの株主も支配を獲得したとはいえないので、どの持分も継続していると考えられ、次の議決権比率以外の要件の判定に進むことになる。議決権比率が等しいと判定されなければ、議決権比率の大きい側の株主が支配を獲得し、議決権比率の小さい側の株主の持分は継続を断たれることになるので、この企業結合は取得であり、議決権比率の大きい側の企業が取得企業と判定され、パーチェス法が適用される。

② 議決権比率以外の要件による判定

次に、議決権比率以外の要件の判定では、結合後企業の意思決定機関を通じて、又は財務上若しくは営業上の重要な契約等を通じて、結合後企業を支配しているか否かを判定する。ただし、既に議決権比率が等しいという数値基準を充たしているのであるから、結合後企業の株主総会の支配関係について改めて株主を個別に分析してその支配関係を判定することは行わないこととした。また、企業結合日後2年以内に一方の結合当事企業の大部分の事業を処分する計画がある場合にも、支配関係が存在すると考えた。すなわち、事業を処分する計画がある結合当事企業は支配されると考え、持分の継続はそこで断たれると考えた。また、株式の交換比率が時価に基づいて算定した交換比率と一定以上乖離している場合には、多額のプレミアムが発生していると考えられるので、このような場合も持分の結合には当たらないと考えた。

結合当事企業の一方が支配を獲得していないと判定されれば、この企業結合は持分の結合であり、持分プーリング法が適用される。他方、結合当事企業の一方が支配を獲得していると判定されれば、この企業結合は取得であり、支配を獲得していると判定された企業が取得企業と判定され、パーチェス法が適用される。

(4) 共同支配企業の形成

共同支配企業の形成を本基準の対象としないことも考慮したが、その場合、共同支配企業か否かという会社形態の違いにより本基準の対象範囲を区別することになり、そこに裁量の働く余地が残ることになる。そこで、共同支配企業の形成も企業結合の定義に含め、それ以外の企業結合と一貫した考え方を適用することとした。

ただし、共同支配企業の形成か否かの判定については、通常、共同支配であることが契約等から明らかであるので、そのような企業結合については、議決権比率による判定は行わずに議決権比率以外の要件による判定を行うこととした。その結果、実態として結合当事企業の一方が支配を獲得していると判定されれば、この企業結合を本基準にいう共同支配企業には該当しない取得とみなし、支配を獲得していると判定された企業を取得企業としてパーチェス法を適用することになる。

3 取得の会計処理

(1) 取得企業の決定方法

取得企業の決定は、取得と持分の結合とを識別する規準と整合した形で行うこととした。すなわち、識別規準の①から③までは、それぞれが前者が後者の判定に進むための必要条件となっていたから、まず①対価の種類で取得と判定された場合には、対価を支出した企業を取得企業とする。次の②議決権比率の判定で取得と判定された場合には、議決権比率が大きいと判定された結合当事企業を取得企業とする。最後の③議決権比率以外の要件の判定で取得と判定された場合には、支配を獲得した結合当事企業を取得企業とする。

なお、企業結合が議決権のある株式の交付により行われる場合は、通常、議決権のある株式を交付する企業が取得企業である。しかし、吸収合併の場合、法律上存続する会社(存続会社)が議決権のある株式を交付するものの、法律上消滅する会社(消滅会社)の株主が合併後、存続会社の議決権総数の過半数を保持又は受取る結果、企業結合会計上、消滅会社が取得企業に該当し、存続会社が被取得企業に該当する場合がある。このような事象は、議決権のある株式を交付した会社と企業結合会計上の取得企業とが一致しないという意味で「逆取得」とよばれるが、本基準ではこの消滅会社が、企業結合会計上、取得企業に該当することになる。

他方、現行商法では、存続会社のすべての資産及び負債を時価評価することは認められないと解釈されていることから、上記の逆取得の場合に、個別財務諸表上、パーチェス法を適用し存続会社のすべての資産及び負債を時価評価することを強制することは商法の規定に抵触する虞がある。したがって、逆取得の場合には、連結財務諸表上は消滅会社を取得企業としてパーチェス法を適用することとするが、個別財務諸表上は持分プーリング法に準じた処理方法により会計処理することとした。

また、株式交換において、完全子会社が取得企業となる場合も逆取得に該当する。このような場合には、完全親会社の連結財務諸表では、完全子会社を取得企業としてパーチェス法を適用することになる。株式移転による共同持株会社の設立の形式をとる企業結合にパーチェス法を適用する場合には、完全子会社の一つを取得企業とすることになる。

なお、結合当事企業が3社以上である企業結合においては、議決権比率が最上位の結合当事企業と議決権比率が等しいと判定されたすべての結合当事企業について判定手続を実施し、取得企業を決定することとした。

(2) 取得原価の算定

① 基本原則

取得と判定された企業結合における取得原価の算定は、一般的な交換取引において資産の取得原価を算定する際に適用されている一般的な考え方によることが整合的である。一般的な交換取引においては、その交換のために支払った対価となる財の時価は、通常、取得した資産の時価と等価であると考えられており、取得原価は対価の形態にかかわらず、支払対価となる財の時価で算定される。すなわち、交換のための支払対価が現金の場合には現金支出額で測定されるが、支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と取得した資産の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で測定されるのが一般的である。したがって、公開企業が自己の株式を交付して非公開企業の純資産を取得した場合には、通常、その公開企業株式の時価の方が非公開企業の純資産の時価よりも高い信頼性をもって測定できることから、取得原価は公開企業株式の時価を基礎にして算定されることになる。

② 取得が複数の取引により達成された場合の算定方法

取得が、単一の取引ではなく複数の取引により達成される場合、原則として、取得企業が被取得企業に対する支配を獲得するに至った個々の取引ごとに取得の対価となる財の時価を算定し、それらを合算したものを取得原価とすることとした。これは、個々の交換取引はあくまでその時点での等価交換取引であり、取得が複数の交換取引により達成された場合は、取得原価は個々の交換取引ごとに算定した原価の合計額とすることが経済的実態を適切に反映するとの考え方によるものである。

③ 株式の交換の場合の算定方法

株式の交換による取得の場合において、市場価格のある取得企業等の株式が取得の対価として交付されるときは、いつの時点での株価をもって取得原価を算定すべきか、すなわち主要な交換条件が合意されて公表された時点での株価と、実際の株式交付時点での株価のいずれで測定すべきかという論点がある。この論点に関しては、結合当事企業は、お互いの本来の事業価値等を適切に反映した結果として、企業結合の主要条件、とりわけ交換比率の合意に至っているのが通常であり、また、そのような合意内容が公表された後の株価変動には被取得企業の本来の事業価値とは必ずしも関係しない影響が混在している可能性もあると考えられることから、原則として、企業結合の主要条件が合意されて公表された日前の合理的な期間における株価を基礎にして算定することとした。ただし、株式交付日の株価が当該主要条件が合意されて公表された日前の合理的な期間における株価と大きく異ならない場合には、株式交付日の株価を基礎に算定することも認めることとした。

株式の交換の場合、基本的には取得原価の算定値として交換比率算定上の評価額は利用できない。これは、交換比率算定上の評価額は、通常、お互いが共通の前提の下であくまで適切な交換比率を算定するために事業価値を算定したものであり、取得することとなる純資産の時価や取得の対価となる財の時価として算定したものではないからである。なお、非公開企業同士の株式の交換比率の決定に当たって、企業結合会計上の測定値として妥当と認められる時価純資産額が算定されている場合には、その時価純資産額を基礎にして取得する純資産の時価を算定できる。

④ 取得に要した支出額の会計処理

取得と判定された企業結合に要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は、発生時の事業年度の費用として処理することとした。これは取得はあくまで等価交換取引であるとの考え方を重視し、取得企業が等価交換の判断要素として考慮した支出額に限って取得原価に含めることとしたためである。

⑤ 条件付取得対価の会計処理

企業結合契約の中には、企業結合契約を締結した後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、追加的に株式が交付されたり現金又は他の資産が引渡されたりする条項が含まれているものがある。このように、企業結合契約において定められる、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して追加的に交付又は引渡される取得対価は、「条件付取得対価」とよばれる。

被取得企業が企業結合契約締結後の特定年度において特定の利益水準を維持又は達成したときに、取得企業が株式を追加で交付する条項があるなど、条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識することとした。追加的に認識するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識されたものと仮定して計算し、追加認識する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する。

他方、取得企業が交付した特定の株式又は社債の市場価格が特定の日又は期間における特定の価格を下回っているときに、当初合意した価額を維持するために株式又は社債を追加で交付する条項があるなど条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合がある。このように当初合意された価額が維持される場合には、条件付取得対価の交付により取得原価を追加的に認識するのは適切ではないため、その交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、追加で交付可能となった条件付取得対価をその時点の時価に基づき認識するとともに、企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正することとした。また、当該修正により生じた時価が社債金額より高い場合のその差額(プレミアム)の減少額、又は時価が社債金額より低い場合のその差額(ディスカウント)の増加額を将来にわたって規則的に償却することとした。

(3) 取得原価の配分方法

① 基本原則

取得企業は、被取得企業から取得した資産及び引受けた負債の時価を基礎として、それらに対して取得原価を配分することとなる。これは、取得と判定された企業結合に特有な処理ではなく、企業結合以外の交換取引により複数の資産及び負債を一括して取得又は引受けた場合に一般的に適用されているものである。すなわち、交換取引により複数の資産及び負債を一括して取得又は引受けた場合には、まず、支払対価総額を算定し、次にその支払対価総額を、一括して取得又は引受けた個々の資産及び負債の時価を基礎として、それらの個々の資産及び負債に対して配分するのと同様である。その際、取得と判定された企業結合の特徴の一つとして、取得原価としての支払対価総額と、被取得企業から取得した資産及び引受けた負債に配分された純額との間に差額が生ずる場合があり、この差額がのれん又は負ののれんである。

② 識別可能資産及び負債の範囲

被取得企業から取得した資産及び引受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なものは、識別可能資産及び負債とよばれる。この識別可能資産及び負債の範囲については、被取得企業の企業結合日前の貸借対照表において計上されていたかどうかにかかわらず、企業がそれらに対して対価を支払って取得した場合、原則として、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるものに限定することとした。例えば、我が国においては、法律上の権利又は分離して譲渡可能な無形資産に対して対価を支払って取得した場合、通常、それらは適当な科目を付されて無形固定資産に計上されることになると考えられる。したがって、取得した資産に法律上の権利又は分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、取得原価を当該無形資産等に配分することができるものとした。また、取得後短期間で発生することが予測される費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、むしろ、その費用又は損失を負債として認識した方がその後の投資原価の回収計算を適切に行いうると考えた。

③ 識別可能資産及び負債の時価の算定方法

識別可能資産及び負債の時価は、通常の資産を取得した際に適用される一般原則との整合性を考慮して、企業結合日時点での時価を基礎にして算定することとした。本基準では、時価は、強制売買取引や清算取引ではなく、いわゆる独立第三者間取引に基づく公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格であるが、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額であると考えた。したがって、対象資産及び負債に関して観察可能な市場価格がある場合には、その市場価格が通常最も客観的な評価額であり、企業結合日時点の時価となると考えられる。そのような典型例としては、市場性のある有価証券が考えられる。他方、対象資産及び負債に関して観察可能な市場価格がない場合の方が現実には圧倒的に多く、そのような場合にも、その時価を何らかの方法により見積る必要があるが、これは取得と判定された企業結合の場合に特有なものではなく、通常の交換取引において取得した場合と同様である。このような観察可能な市場価格がない資産及び負債の時価を見積る際には、独立第三者間取引に基づく公正な評価額を算定する目的との整合性を確保するため、原則として、市場参加者が利用するであろう情報や前提等が入手可能である限り、それらに基礎を置くこととし、そのような情報等が入手できない場合には、見積りを行う企業が利用可能な独自の情報や前提等に基礎を置くこととして、そのような合理的な基礎に基づき見積られた価額は合理的に算定された時価であると考えることとした。その典型例としては、大規模工場用地や近郊が開発されていない郊外地に代表される固定資産が考えられる。特に、時価が一義的には定まりにくい土地等が識別可能資産に含まれている場合において、負ののれんが多額に生ずるときには、その金額を当該土地等に合理的に配分した評価額も、ここでいう合理的に算定された時価であると考えられる。

④ 暫定的に決定した会計処理の確定手続

識別可能資産及び負債を特定し、それらに対して取得原価を配分する作業は、企業結合日以後の中間決算又は年度決算前に完了すべきであるが、それが困難な状況も考えられる。そのため、企業結合条件の交渉過程において、通常、ある程度の調査を行っている場合が多く、また、一年を超えた後に企業結合日時点での状況に基づいて企業結合日時点での識別可能資産及び負債を特定し、しかもそれらの企業結合日時点での時価を見積ることは非常に困難であることなど実務面での制約等を考慮し、配分する作業は企業結合日以後一年以内に完了するものとし、完了前の決算においては暫定的に決定した会計処理を行うこととした。したがって、企業結合日が例えば中間決算又は年度決算の直前となる場合は、配分する作業が完了した時点で初めて会計処理を行うのではなく、その中間決算又は年度決算の時点で入手可能な合理的な情報等に基づき暫定的な会計処理を行った上で、その後、追加的に入手した情報等に基づき配分額を確定させることになる。

(4) のれんの会計処理

のれんの会計処理方法としては、その効果の及ぶ期間にわたり「規則的な償却を行う」方法と、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法が考えられる。「規則的な償却を行う」方法によれば、企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額(連結財務諸表の場合は連結調整勘定)の償却という費用の対応が可能になる。また、のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している。さらに、取得したのれんは時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるので、取得したのれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができる。のれんの効果の及ぶ期間及びその減価のパターンは合理的に予測可能なものではないという点に関しては、価値が減価した部分の金額を継続的に把握することは困難であり、かつ煩雑であると考えられるので、ある事業年度において減価が全く認識されない可能性がある方法よりも、一定の期間にわたり規則的な償却を行う方が合理的であると考えられる。また、のれんのうち価値の減価しない部分の存在も考えられるが、その部分だけを合理的に分離することは困難であり、分離不能な部分を含め「規則的な償却を行う」方法に一定の合理性があると考えた。

一方、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法は、のれんが超過収益力を表わすとみると、競争の進展によって通常はその価値が減価するにもかかわらず、競争の進展に伴うのれんの価値の減価の過程を無視することになる。また、超過収益力が維持されている場合においても、それは企業結合後の追加的な投資や企業の追加的努力によって補完されているにもかかわらず、のれんを償却しないことは、上述のとおり追加投資による自己創設のれんを計上することと実質的に等しくなるという問題点がある。実務的な問題としては、減損処理を実施するためには、のれんの価値の評価方法を確立する必要があるが、そのために対処すべき課題も多い。

本基準では、こうした議論を踏まえ「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法に対し、「規則的な償却を行う」方法に一定の合理性があること、及び子会社化して連結する場合と、資産及び負債を直接受入れ当該会社を消滅させた場合の経済的な同一性に着目し、正の値であるのれんと投資消去差額の会計処理との整合性を図る等の観点から、規則的な償却を採用した。また、その償却期間についても、現行の「連結財務諸表原則」の考え方を踏襲し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって償却することとした。なお、のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」の適用対象資産となることから、規則的な償却を行う場合においても、「固定資産の減損に係る会計基準」に従った減損処理が行われることになる。

一方、「規則的な償却を行う」方法と、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法との選択適用については、利益操作の手段として用いられる可能性もあることから認めないこととした。

のれんを規則償却とした場合、例えば、株式の交換による企業結合のプロセスにおいて、買収対価(発行株式金額)の過大評価や過払いが生じている可能性がある場合に、のれん等が過大に計上される状況が考えられる。このように取得原価のうち、のれんやのれん以外の無形資産に配分された金額が相対的に多額になるときには、企業結合年度(企業結合日の属する事業年度をいう。以下同じ。)においても「固定資産の減損に係る会計基準」の適用上、減損の兆候が存在すると判定される場合もある。被取得企業の時価総額を超えて多額のプレミアムが支払われた場合や、取得時に明らかに識別可能なオークション又は入札プロセスが存在していた場合も同様に取扱われることがある。

(5) 負ののれんの会計処理

負ののれんの会計処理方法としては、想定される負ののれんの発生原因を特定し、その発生原因に対応した会計処理を行う方法や、正の値であるのれんの会計処理方法との対称性を重視し、規則的な償却を行う方法が考えられる。

想定される発生原因に対応した会計処理を行う方法には、企業結合によって取得した非流動資産に負ののれんを比例的に配分し、残額が生じれば繰延利益若しくは発生時の利益として計上する方法、又は、全額を認識不能な債務やバーゲン・パーチェスとみなし発生時に利益計上する方法等が含まれる。

非流動資産に比例的に配分する方法の基となる考え方には、負ののれんの発生は、パーチェス法の適用時における識別可能資産の取得原価を決定する上での不備によるものとみなし、この過程で測定を誤る可能性の高い資産から比例的に控除することが妥当であるとみるものがある。一方、発生時に利益計上する方法は、識別可能資産の時価の算定が適切に行われていることを前提にした上で、負ののれんの発生原因を認識不能な債務やバーゲン・パーチェスであると位置付け、現実には異常かつ発生の可能性が低いことから、異常利益としての処理が妥当であると考えるものである。また、異常利益として処理させる(経常的な利益とはならない)ことは、時価の算定を適切に行うインセンティブになるという効果もあるといわれている。

これらはいずれも、負ののれんのすべてをある特定の原因により発生するものとみなし、その原因に対応した会計処理を行うものであるが、「(3)取得原価の配分方法」の「識別可能資産及び負債の時価の算定方法」にいう土地等の場合を除き、想定された発生原因に合理性を見出すことは困難な場合が多い。したがって、本基準においては、取得後短期間で発生することが予測される費用又は損失について、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、発生原因が明らかなことから、取得原価の配分の過程で負債として認識されるものと考え、残額については、承継した資産の取得原価総額を調整する要素とみて、正の値であるのれんと対称的に、規則的な償却を行うこととした。

(6) 個別財務諸表上の会計処理

本基準では、連結財務諸表上も個別財務諸表上も同様にパーチェス法を適用するものとしている。資本の部の記載についても、法令に特段の定めがある場合を除き同様である。

しかしながら、株式交換の場合、完全親会社の個別財務諸表における完全子会社株式の取得原価については複数の考え方がありうる。また、消滅会社が取得企業となる場合のように、商法の規定との関係から複数の処理方法が考えられる状況が存在する。そのため、特に以下について個別財務諸表上の取扱いを明らかにした。

株式交換による企業結合にパーチェス法を適用する場合、完全親会社の連結財務諸表と個別財務諸表とで支出した対価の算定は異ならないものと考えることとし、本基準に従って算定される取得原価で被取得企業株式(完全子会社株式)を計上することとした。また、完全子会社が取得企業となる場合、完全親会社の個別財務諸表では、取得企業の企業結合日における適正な帳簿価額による純資産額に基づいて取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定することとした。

また、株式移転による共同持株会社の設立の形式をとる企業結合にパーチェス法を適用する場合、完全親会社の個別財務諸表においては、他の被取得企業株式と同様に取得企業株式も完全子会社株式として扱われる。このとき、連結財務諸表提出会社となる完全親会社の連結財務諸表では、企業結合日においていずれかの完全子会社が取得企業となり、当該取得企業(完全子会社)の資産、負債及び資本が企業結合直前の帳簿価額で受入れられることになるため、完全親会社の個別財務諸表上においても、取得企業(完全子会社)の企業結合日における適正な帳簿価額による純資産額に基づいて取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定することとした。

企業結合が合併の形式をとる場合において、取得企業が存続会社と異なるときは、個別財務諸表上は持分プーリング法に準じた処理方法を適用することとした。また、企業結合が現物出資又は吸収分割による子会社化の形式をとる場合、被取得企業に移転された事業に対する取得企業の支配は、その企業結合の前後で継続していることから、取得企業の個別財務諸表では移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて被取得企業株式(子会社株式)の取得原価を算定することとした。

4 持分の結合の会計処理

(1) 資産、負債及び資本の引継ぎ

企業結合が持分の結合と判定される場合には、すべての結合当事企業の資産及び負債はその帳簿価額で企業結合後も引継がれることになる。資本についても、すべての結合当事企業の資本金、資本剰余金及び利益剰余金といった内訳が、自己株式の処理等を除き、原則として、そのまま引継がれる。

企業結合後に引継がれる資産及び負債の帳簿価額は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した「適正な帳簿価額」であることが必要であり、したがって、結合当事企業の資産又は負債の帳簿価額に会計処理又は評価の誤りがある場合には、引継ぎ前にその修正が行われることになる。我が国の商法では、時価以下の範囲で承継資産額を決定することが求められていると解されており、金融商品については最近の会計基準の設定により時価で評価する資産の範囲が拡大してきているものの、例えば土地のような固定資産に含み損がある場合については、従来は時価まで評価減して合併時に引継ぐことが実務では行われてきた。このような場合には、持分の結合の会計処理に当たり、企業結合後に引継ぐべき結合当事企業の帳簿価額をどのように決定するかについて疑義が生ずることがあるが、「固定資産の減損に係る会計基準」が既に整備されたことにより一定の場合に帳簿価額がその資産の回収可能価額まで引き下げられるため、結合当事企業の適正な帳簿価額をそのまま用いることができることとなった。

株式交換又は株式移転の場合には、結合後企業の個別財務諸表における資本の構成が各結合当事企業において計上されていた資本の部の合算と異なる場合がある。このような場合であっても、連結財務諸表上は、各結合当事企業の資本の構成を引継ぐものとする。

持分プーリング法が適用される企業結合において、自己株式が生ずる場合がある。吸収合併により生じた自己株式のうち、消滅会社が企業結合前に保有していた存続会社株式はその適正な帳簿価額で資本の部から控除することになる。また、存続会社が企業結合前に保有していた消滅会社株式に新株を割当てたときは、割当てた分の自己株式を認識せず、当該抱合せ株式の帳簿価額を、資産及び負債の移転による増加資本の額と相殺することになる。

(2) 企業結合年度の連結財務諸表

持分プーリング法を適用する場合には、企業結合の時期にかかわらず企業結合年度の結合当事企業の収益と費用を合算してよいか、また、過年度の財務諸表を修正再表示すべきかという論点がある。過去においても企業結合されていたかのように結合当事企業の過年度の財務諸表を合算して修正再表示する処理は、持分プーリング法が認められてきた諸外国の会計基準で採用されてきた。このような処理は業績の比較可能性という観点から望ましいものの、我が国では、有価証券報告書における開示が一年を単位として独立しており過年度の修正再表示の慣行がないこと等を考慮して、期首に企業結合が行われたとみなして損益を合算する処理を求めることとした。

(3) 会計処理方法の統一

結合当事企業は企業結合前には独立して事業を営んでおり、各企業が採用している会計処理が統一されていることは想定されていない。このように結合当事企業の会計処理方法に違いがある場合には、企業結合後の企業の財政状態及び経営成績を適切に表示するため、適切と考えられる方法に統一することとした。適切と考えられる方法の判断は、連結財務諸表における親子会社間の会計処理の統一に準じて、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については会計処理を統一することが適当である。

(2)の企業結合年度の連結財務諸表及び企業結合後の個別財務諸表においては、このような統一後の会計処理方法に基づいて財務諸表を作成しなければならない。

(4) 企業結合前の取引等の消去

企業結合年度の連結損益計算書においては、結合当事企業間の企業結合前の取引は消去して表示し、それらの取引から生じた損益については、企業結合年度の連結財務諸表において、未実現損益の処理に準じて消去することとした。ただし、それらの金額に重要性が乏しい場合には、消去しないことができる。

(5) 企業結合に要した支出額の会計処理

持分プーリング法が適用される企業結合に要した支出額は、パーチェス法が適用される場合と異なり、企業結合の対価を構成しないと考えられるところから、発生時の事業年度の費用として処理するものとした。

(6) 個別財務諸表上の会計処理

① 株式交換及び株式移転

株式交換又は株式移転による企業結合に持分プーリング法が適用される場合には、すべての結合当事企業の資産、負債及び資本はその帳簿価額で企業結合後も引継がれることになるため、個別財務諸表においても、結合当事企業の企業結合日における適正な帳簿価額による純資産額に基づいて完全子会社株式の取得原価を算定することとした。

② 合併

合併による企業結合に持分プーリング法が適用される場合には、結合当事企業の資産、負債及び資本の適正な帳簿価額を引継ぐこととなる。結合当事企業の会計処理方法に違いがある場合には、会計処理方法の変更に準じて適正な方法に統一し、当該処理により生じた差額は企業結合年度の損益として処理することとした。会計処理の統一は、企業結合計画の中で企業結合前の各結合当事企業の財務諸表において正当な理由に基づく会計方針の変更として行うことも認められるが、この場合にはその影響額を適切に開示しなければならない。

(7) 共同支配企業の形成

本基準にいう共同支配企業の形成は持分の結合であるため、持分プーリング法に準じた処理方法を適用することとした。

ただし、共同支配企業を共同で支配する企業(投資企業)が、当該共同支配企業の形成に当たり事業を移転した場合には、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて当該共同支配企業に対する投資の取得原価を算定することとし、共同支配企業の資本のうち投資企業の持分比率に対応する部分との差額は処理しないこととなる。

5 共通支配下の取引等の会計処理

本基準が対象としている企業結合は、その定義からも明らかなように経済的に独立した企業同士の取引に限定することなく、法的に独立した企業同士の取引を対象としているため、企業集団内における合併、吸収分割、現物出資等の取引(共通支配下の取引)が含まれることとなる。子会社の判定基準として支配力基準が導入されてから、我が国においては企業集団内における企業再編が活発に行われることになったが、このような企業再編に係る取引は、基本的に連結財務諸表には影響しない取引であるため、個別財務諸表への影響も独立企業間の企業結合とは区別すべきであるという観点から、共通支配下の取引として個別財務諸表上の取扱いを示す必要があると考えた。なお、企業集団内における企業再編のうち企業結合に該当しない取引、例えば、株式移転による持株会社の設立や新設分割による子会社の設立については、共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するのが適当である。

また、株式交換等により少数株主から子会社株式を取得する取引(少数株主との取引)は、企業結合に該当しない取引ではあるが、現行では、現金による取得を前提とした連結財務諸表上の取扱いが「連結財務諸表原則」において示されているに留まっているため、個別財務諸表上の取扱いを含めた全般的な会計処理を示す必要があると考えた。

したがって、本基準では、共通支配下の取引及び少数株主との取引について、それぞれの会計処理方法を以下のように定めることとした。

(1) 共通支配下の取引

共通支配下の取引とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の企業により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合であり、共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えた。このため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成に当たっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の帳簿価額により計上することとした。

ただし、親会社と子会社が企業結合する場合において、連結財務諸表の作成に当たり、子会社の純資産等の帳簿価額を修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額により計上しなければならないこととした。

(2) 少数株主との取引

少数株主との取引は、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引である。それは企業集団内の取引ではなく、親会社の立場からは外部取引と考えられる。したがって、親会社が子会社株式を少数株主から追加取得したときは、個別財務諸表上、子会社株式の取得原価は、当該株式の時価又は支出した対価となる財の時価で測定される。また、連結財務諸表上は、その金額と減少する少数株主持分の金額との差額をのれん又は負ののれんとして処理することになる。後者は、「連結財務諸表原則」が想定する現金を対価とする場合の処理と同様の取扱いとなる。

しかし、親会社が自社の株式を対価として子会社株式を追加取得した場合、子会社株式の取得原価と増加する資本の額の処理には、なお検討を要する論点が残されている。連結財務諸表上、支配獲得時に子会社の資産及び負債を全面的に評価替えしている限り、自社の株式を対価とする追加取得では、その前後において資産及び負債に変化はなく、追加的なのれんを計上してその後の利益に影響させる意味もないという考えがありうるからである。その観点からすれば、個別財務諸表上は、連結財務諸表上の少数株主持分の金額相当額を、子会社株式の取得原価として追加計上することになる。

株式の交換による取得を、現金による子会社株式の取得とその現金の拠出との組み合わせだと考えれば、子会社株式の取得原価も、増加する資本の額も、いずれも対価として交付した株式の時価で決められる。しかし、それですべてが片付くのであれば、そもそも共通支配下の企業結合を独立の問題として取り上げる必要はない。本基準では、概念上の検討を将来の課題として残し、専ら現行の実務に与える混乱を最小にする観点から、自社の株式を対価として追加取得した子会社株式をその時点の時価で評価して同額の資本を計上するとともに、連結財務諸表上は、その金額と消滅する少数株主持分の金額との差額を「連結財務諸表原則」における子会社株式の追加取得に準じて処理することとした。

6 開示

「連結財務諸表原則」では、連結調整勘定は、事実上、のれんの性格を有するものとされていることから、本基準では、営業権のうちのれんに相当するものと合わせ、のれん又は負ののれんとして表示することとした。また、財務諸表の有用性を高める観点から、次の場合に応じて注記事項を定めることとした。

(1) パーチェス法を適用した企業結合

(2) 持分プーリング法を適用した企業結合

(3) 共通支配下の取引等

(4) 重要な後発事象

なお、本基準は、その適用範囲を超えて、企業結合前後の比較可能性を高める追加的な情報を任意で開示することを妨げるものではない。

四 実施時期等

1 本基準については、今後、関係各方面の準備作業、企業側の受入準備が必要であり、これらを考慮して、平成十八年四月一日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当である。

2 のれんの償却期間について、本基準は最長20年としているところ、商法施行規則では、合併等により取得したのれんについては5年以内の償却が求められている。したがって、本基準の実施に合わせて商法施行規則の改正が行われることが適当である。本基準の負ののれんの負債計上及び持分プーリング法を適用する場合の帳簿価額の引継ぎ等についても、本基準の実施により商法との関係で障害が生じないように措置することが適当である。

3 本基準を実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係府令を整備するとともに、次の事項を含め、企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当である。

(1) 合併、株式交換・株式移転、会社分割、営業譲渡・譲受等、企業再編の形式ごとの連結財務諸表上及び個別財務諸表上の適用方法

(2) 取得した事業用土地の時価の算定方法

(3) 取得企業が存続会社と異なる企業結合について、パーチェス法を適用したとしたときの影響額を注記する場合の注記項目等 


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